その差は寒天
ヨーグルトを毎日食べている。ここ数か月は水切りヨーグルトにして味わっている。水分が抜けてもったりした食感にはまってしまった。
よく行くスーパーで450グラムで105円(税込)の安価なヨーグルトを購入しているのだが、珍しく売り切れてしまっている日があった。
他のものはどれも高い。とは言え数十円の差だが、毎日かかさず食べている身からすると大きい。
仕方ない、今回だけ贅沢をしよう。有名なメーカーの有名なヨーグルトを手に取った。
それが間違いだった。
いつも通り水切りヨーグルトにして一口食べる。
衝撃。
おいしい。
予想の十倍はおいしい。
食感がまったく違う。狼狽えながらスプーンを口に運んだ。待ってくれ。値段以上の差がついているんじゃないか。普段私が食べていたのはヨーグルトではなかったのか。動揺した。これを食べ切ったら、次に買うヨーグルトはどうすればいいのか。
ショックが大きすぎて家族にも一週間言い出せなかった。ヨーグルトを食べる目的は腸の健康維持だ。味なんて二の次よ。安さ第一ですよ。いつだったか自慢気に語っていた自分を恨んだ。毎日食べるからこそ味を重視することがQOLの向上に繋がるのではないか。まずい、手段が目的化しそうだ。
より良いものを知ることは生活を豊かにするが、この場合はどうだろうか。私があの日あのヨーグルトを食べなければ、105円の味しか知らないままであれば、きっと悩むこともなく幸せだったろうに。
その後結局元のヨーグルトを食べているが、一度感じた印象は味わうほど深まっていく。なんか粉っぽい。滑らかさが足りない。ホエイもやたら多く出ている。
パッケージの原材料を読んだ。生乳、乳製品、寒天。ああ、寒天。君のおかげで、寒天。
今冷蔵庫にある分は、おそらくあと四日ほどで消費する。次にヨーグルト売り場で自分が何を手に取るのか、私にも予測がつかないままである。