やる気がないなら帰れ

大昔、飲食店でアルバイト中に副店長から言われた言葉である。

もう何年も経つのに未だに思い出しては嫌な臭いを嗅いだときの顔になってしまう。トラウマだ。

当時の私は今よりも更に手際は悪いしおどおどしていた。しかし真面目であった。無能な働き者である。そこが副店長の癪に障ったのか、とうとうある日爆発が起こった。

 

店の状況を見ろ。そんなところでサボるな。やる気がないなら帰れ。

 

え?

無論サボってなどいない。人手のないエリアを持ち場としてできることをやっていたつもりだった。

他人から怒られ慣れていない私は「ほわぁ〜」と情けない心の声をあげて立ち尽くしたが、何とか「すみません。ご迷惑おかけしました。頑張ります」と謝って別の持ち場へ飛んでいった。副店長は満足気に「うん」と頷いて笑った。無能な働き者、その素直さを証明した瞬間である。

 

今にして思えば、私の無能さを正面切って突き付けてくれた存在として感謝すべきだ。誰だって嫌われ役を買って出たくはないだろう。しかしあの日の真面目な私は少なからずこう思った。

 

帰れは言いすぎじゃないか。

体育会系の教師が不良生徒に言うやつだろう、それ。

私は飲食店のアルバイトスタッフだぞ。

 

そこは今は大丈夫だから、あっちのスタッフを手伝って。状況をよく見て動いてね。

それじゃ伝わりそうもないほど、当時の私はどうしようもなく舐めた態度のアホに見えていたのだろうか。

ちなみに副店長は他のスタッフ(明るいギャルや明るいギャル男)にはいつもニコニコと優しく接して冗談も言い合っていた。単に私個人が嫌われていた可能性もある。というか九分九厘そっちの気がしてきた。悲しい。

 

こうして文章にしてみるとしょうもなさすぎてちょっと心が軽くなった。やはりアウトプットは大切ですね。

今ならこう言ってみたい、やる気、あります。帰りません。押忍。