いいよな、中二病

中学生頃の思い出話です。特にオチはないです。

思春期の私はしっかり中二病だった。好きな漫画のキャラ、ゲームのキャラに本気で惚れ込んだ。ありあまるエネルギーを二次創作にぶつけた(ちなみに小学生の頃はポケモン未プレイにも関わらずロコンに恋するリザードンという内容のラブコメ漫画を描いていた。今思うと傑作だった気がするので実家にまだあるなら発掘して読みたい)。

そんなエネルギーの塊がインターネットという無限の可能性に出会ってしまうとどうなるか。父を説得してプロバイダ契約をしてもらい、拙いHTMLでホームページを制作して公開した。自分のホームページを持つ中学生などそうそういまい、と謎の優越感に浸った。同じクラスの頭が良くて優しい女子に自慢すると、「私もホームページ作ってるよ!」と返ってきた。閲覧して驚愕。かわいらしい画像をかわいらしく配置した、フォントも小さめでオシャレなホームページ。大人が作ったものと遜色なかった。自分の稚拙で中二病全開のくっさい文章と絵が並ぶそれが恥ずかしくてたまらなくなり、以来二度とホームページを持っているなどと人に言うことはなかった。それまで自分を包んでいた謎の万能感も薄れていった。彼女に感謝である。

それでもエネルギーがありあまっていたので廊下を走ったりしていた。親しい友人らの前では調子に乗った言動を繰り返し、本当に痛々しい人間だった。同学年は成績優秀で人柄のいい生徒が多く、調子に乗った中二病を無視したりする人はいなかった。不幸中の幸いというべきか、恐るべき強運の持ち主というべきか。

学校でエネルギーを発散しすぎて、帰り道に力尽きることがしばしばあった。ド田舎の過疎化が進む集落に住んでいたこともあり、道端でスポーツバッグを枕に寝たり、神社で長々と休憩したりしていた。家までの道のりの終盤はきつい上り坂の連続なのだが、それが嫌すぎて友人と何時間も話し込むこともしょっちゅうであった。帰宅して夕飯を食べると元気になった。そしてまた二次創作やホームページ制作に勤しんだ。ダイアルアップ接続のため固定電話が使えなくなるので深夜に集中してPCに向かった。IEで好きなホームページを閲覧し、ブックマークに登録し、気に入ったイラストや小説はフロッピーディスクやCD-Rに保存したりプリントアウトしてクリアファイルに綴じた。あっという間に夜型人間になり、視力も落ちた。それでも楽しく充実した日々だった。

嫌な思い出などほとんどない。強いて言えば、当時学年で一、ニを争う浮きっぷりの個性派クラスメイトが私の友人に告白して玉砕した。その際「鈍田はどう?良い奴だよ」と友人が言うと「いや、鈍田はうるさいじゃん。騒がしい人って苦手なんだよね」と即レスされたことぐらいか。自分が知らない所でどうでもいい奴に振られたのは後にも先にもこの時だけである。うるせえよ。私も願い下げだよ。万が一再会した時は言ってやろうと心に決めている。

人は調子に乗っていた頃を「黒歴史」と言うが、私は一周回っていとおしい歴史だ。もちろん頭を抱えたくなるエピソードも多いが、好きなものや楽しいことにエネルギーをすべて注ぐことができたのは素晴らしいことだ。今はできない。まずエネルギーが当時100リットル/日だとしたら今は20cc/日ぐらいしかない。年を取り、環境も状況も変わったから仕方ないけれど、それでももし願いがなんでも叶うならあの頃のように100リットル/日を使い切るような日々を過ごしてみたいものである。若さって最高〜。